此岸からの風景
<日本灯台紀行 旅日誌>オヤジの灯台巡り一人旅 長~い呟きです
2021
03/17
Wed.
10:40:19
<灯台紀行・旅日誌>2020
Category【灯台紀行 南伊豆編】
<灯台紀行・旅日誌>2020南伊豆編#10
下田観光4 <まどが海遊公園>
<まどが浜海遊公園>に着いた時には雨が降っていた、と思う。広い駐車場には、五、六台の車が止まっていた。まだお昼前だったような気がする。いくら何でもホテルに戻るには早すぎるだろう。一応、窓にシールドを張った。後ろの仮眠スペースに移動して、肘枕して少し横になった。だが、さして眠くない。じきに起き上がって、カメラを引き寄せ、撮影画像のモニターなどをした。<黒船>から撮った写真の数が多い。だが、そのほとんどが写真の体をなしていない。記念写真だよ、自分に言い訳をした。
また横になった。少しそのままでいたが、眠くならない。起き上がって、お菓子などを食べたりもした。退屈だ。シールド越しに外を見た。空が少し明るくなっていて、雨はやんでいた。気分転換!車から出て、装備を整え、海際の柵まで行った。三脚を広げ、望遠カメラをセットした。<犬走島>を貫通した防波堤の先端に、白い灯台が見える。左側にも小島があり、赤い鳥居が小さく見える。沖には、さらに小さく、真一文字の防波堤が海の中にあり、その右先端に赤い灯台が見える。
海上10キロ先の、自分にとっては、まさに伝説的な<神子元島灯台>は、と言えば、視線の延長上にあるわけだが、残念ながら、その影がうっすら見える程度だった。天気が良くないのだ。しつこいようだが、空も海も灰色だった。それでも、この瞬間、眼前に広がる光景を写真におさめようと、少しは努力した。鉛色の雲が垂れ込める中、水平線の近くが若干明るかったからだ。
二、三枚撮って、モニターした。こりゃだめだな。写真は非情で、思い込みを写し撮ってはくれないのだ。だが、引き上げる気にもなれず、しばらく、柵に寄りかかったり、そばのベンチに腰掛けたりして、下田湾や、水平線の辺りを眺めていた。そのうち、空は、鉛色の雲すら霧散して、白っぽい、ただの空白になった。三脚から望遠カメラを外し、たたんだ。望遠と標準、二台のカメラをバックの中にきっちりおさめ、三脚をバッグの背中にしっかり固定した。南伊豆旅での撮影が終わったのだ。
車に戻った。時計を見たのだろう。まだ早いような気がしたが、宿に戻ることにした。と、ふと左手の方にあるトイレを見た。自販機も二台ほどある。ということは、ゴミ箱もあるわけで、空き缶などを捨てて行こうと思った。トイレに一番近いところまで車を移動して、外に出た。ゴミ箱の横には、たしか、ゴミは持ち込まないでください、とかなんとか書いてあった。ま、空き缶二つくらいいいだろう。
ついでに、トイレに入って、用を足した。このトイレはほとんど印象にない。ということは、臭くも汚くもなく、特別きれいでもなく、要するに、普通だったのだろう。雨はやんでいた。ふと気まぐれだ。時間に余裕があったし、オブジェのようなものもあったので、公園内をちょっと見物しようというわけだ。
三つほど、見て回った。一つは、海に向かう<坂本龍馬>の立像だ。なんで、ここに<竜馬>が?と思って、案内板を斜め読みした。ほとんど頭に入らなくて、勝海舟の名前と<龍馬>が下田に立ち寄ったことだけが頭に残った。…今その詳細をネットで検索したが、煩わしいので省略しよう。
二つ目は、大きな<錨>だ。また<錨>だ!というのも、灯台巡りの旅を始めてから、海沿いの公園などに、この本物の<錨>がオブジェとして鎮座している姿をよく目にするからだ。見るたびに、なんでこんなところに<錨>があるんだと思った。だが、今回はその疑問がすぐにとけた。台座だったかな、案内板に<横須賀海上自衛隊寄贈>とあったような気がする。さらに案内文には、すぐ目の前の海に、ペリーの艦船が、おそらく旗艦船<サスケハナ>だろう、<錨>を下したらしいのだ。なるほど、<錨>つながりか。それにしてもと、目の前の海を見た。こんなに近いところに停泊したのか!ちなみに、ペリーの旗艦船は、全長80メートル弱の大型フリゲート船だった。自分が乗った遊覧船<黒船サスケハナ>は35メートルで、その倍以上の大きさだったのだ。
三つ目は、何と<足湯>だ。公園内に、いくつかあるしゃれた東屋の一つが、車座に十人ほど腰かけられるようになっている。近寄って、ちょっと手を浸してみた。あったかい、ちょうどいい湯加減だ。足の甲に湿疹ができていなければ、間違いなく、軽登山靴を脱いで、腰かけたと思う。足を拭くためのタオルを車に取りに行く、という煩わしさも克服しただろう。まあ、次回だな。ただし、<次回>があるのかないのか、その辺は深く考えなかった。
さあ、本当に引き上げよう。雨は降っていなかったような気がする。歩いて、道路の反対側のコンビニへ寄って、朝食用の菓子パンとおにぎりを買った。そのあと、駐車場を出て、信号を右折。ホテル前の駐車場スペースに車を止めた。整理係の<小料理屋の大将>はいなかった。まだ三時前で、チェックイン前だ。
車から降り、歩いて<すき家>へ行った。今日は、機械での注文に迷うこともなかった。なんとなく、カレーが食べたいような気がして、<オム牛カレー>の大盛りを注文した。¥1000ほどだ。ちょっと高いような気もしたが、そんなもんでしょ。少し待たされた。きっと、オムレツの調理に手間取ってるんだ。レジカウンターに店員が出てきた。レジ袋に入った<オム牛カレー大盛り>を受け取り、カンターに置いてあった箸とか紅ショウガの小袋とかを取って、出ようとした。と、その若い店員が<スプーンはいいんですか>と声をかけてきた。なるほど、カレーを食べんるんだ。<お、忘れていたよ>と少し表情を崩して、袋の中に入れた。<すき家>で、これまでで一番愛想のよい店員だった。
駐車場に戻った。トートバックの中に、飲料水などを入れ、カメラバックを背負って、ホテルに入った。一階ロビーは薄暗かった。ふと思って、陳列してあった、土産物を眺めた。<地域クーポン券>¥2000で買ってしまおうというわけだ。受付の卓上ベル=呼び鈴を押すと、隣の部屋から爺がすぐに出てきた。財布から<地域クーポン券>を取り出し、その旨を言って爺に渡した。
爺を待たせて、陳列台の土産物を選んだ。ロクなものはなかったが、ま、なるべく日持ちするものがいい。などと、あれやこれや迷ってしまい、思いのほか、時間がかかった。ふと見ると、爺が、所在なげに、いや、ちょっとイラついた感じでカウンターの中に突っ立っている。
もう、どうでもよくなって、とりあえず¥2000分の土産物を手にして、カンターへ行った。それを、爺は電卓で律儀に計算した。¥2000、ちょうどにはならない。土産物の価格設定が、ちょうどにはならないようになっている。したがって、おつり分\180くらい、損したことになる。ケチケチしたこと書くなよ。ちなみに、買ったのは、<金目鯛スープ12食入り>を二袋、<漁師のふりかけ>一袋、それから、カツオの一口大のおつまみ、これは今手にないので正式な商品名はわからない。というのも、翌日、爺に無理を言って値段の同じ<漁師のふりかけ>と交換してしまったからだ。びっしりと袋に詰まった、こげ茶の、サイコロ型のおつまみは、いくら眺めても、固くて、まずそうだったのだ。
エレベーターで四階に上がった。ひとの気配は全くない。時間的には午後三時前だったと思う。ドアノブに、白いレジ袋がかかっていた。部屋に入った後で、中に入っているものを取り出した。浴衣とシーツとバスタオルとアメニティ類だった。シーツは、面倒なので交換しなかった。すぐに着替えた。糊のきいた浴衣にそでを通し、部屋を出た。貴重品のポーチは、金庫に入れたが、めんどうなので鍵は、部屋のどこかに隠した。どこに隠したのか、今となってはもう思い出せない。
温泉は、昨日にまして最高だった。というのも、一番風呂というやつで、誰もいない。広々した洗い場も湯船も、きれいに清掃されていて気持ちがいい。それに、ちょうどいい湯加減で、自分としては、これほど長時間、温泉につかって、くつろいだことはない。温泉めぐりも悪くないなと思ったほどだ。昨日と同じように、湯船の中を歩いて、窓際へ行き、窓ガラスを手でこすって、外の景色を眺めた。雨が降り出していた。それもかなり強い。風も強い。台風の影響だろうか。五回目の旅で、初めて雨に遭遇した。いままで、運が良すぎたのだ。


下田観光4 <まどが海遊公園>
<まどが浜海遊公園>に着いた時には雨が降っていた、と思う。広い駐車場には、五、六台の車が止まっていた。まだお昼前だったような気がする。いくら何でもホテルに戻るには早すぎるだろう。一応、窓にシールドを張った。後ろの仮眠スペースに移動して、肘枕して少し横になった。だが、さして眠くない。じきに起き上がって、カメラを引き寄せ、撮影画像のモニターなどをした。<黒船>から撮った写真の数が多い。だが、そのほとんどが写真の体をなしていない。記念写真だよ、自分に言い訳をした。
また横になった。少しそのままでいたが、眠くならない。起き上がって、お菓子などを食べたりもした。退屈だ。シールド越しに外を見た。空が少し明るくなっていて、雨はやんでいた。気分転換!車から出て、装備を整え、海際の柵まで行った。三脚を広げ、望遠カメラをセットした。<犬走島>を貫通した防波堤の先端に、白い灯台が見える。左側にも小島があり、赤い鳥居が小さく見える。沖には、さらに小さく、真一文字の防波堤が海の中にあり、その右先端に赤い灯台が見える。
海上10キロ先の、自分にとっては、まさに伝説的な<神子元島灯台>は、と言えば、視線の延長上にあるわけだが、残念ながら、その影がうっすら見える程度だった。天気が良くないのだ。しつこいようだが、空も海も灰色だった。それでも、この瞬間、眼前に広がる光景を写真におさめようと、少しは努力した。鉛色の雲が垂れ込める中、水平線の近くが若干明るかったからだ。
二、三枚撮って、モニターした。こりゃだめだな。写真は非情で、思い込みを写し撮ってはくれないのだ。だが、引き上げる気にもなれず、しばらく、柵に寄りかかったり、そばのベンチに腰掛けたりして、下田湾や、水平線の辺りを眺めていた。そのうち、空は、鉛色の雲すら霧散して、白っぽい、ただの空白になった。三脚から望遠カメラを外し、たたんだ。望遠と標準、二台のカメラをバックの中にきっちりおさめ、三脚をバッグの背中にしっかり固定した。南伊豆旅での撮影が終わったのだ。
車に戻った。時計を見たのだろう。まだ早いような気がしたが、宿に戻ることにした。と、ふと左手の方にあるトイレを見た。自販機も二台ほどある。ということは、ゴミ箱もあるわけで、空き缶などを捨てて行こうと思った。トイレに一番近いところまで車を移動して、外に出た。ゴミ箱の横には、たしか、ゴミは持ち込まないでください、とかなんとか書いてあった。ま、空き缶二つくらいいいだろう。
ついでに、トイレに入って、用を足した。このトイレはほとんど印象にない。ということは、臭くも汚くもなく、特別きれいでもなく、要するに、普通だったのだろう。雨はやんでいた。ふと気まぐれだ。時間に余裕があったし、オブジェのようなものもあったので、公園内をちょっと見物しようというわけだ。
三つほど、見て回った。一つは、海に向かう<坂本龍馬>の立像だ。なんで、ここに<竜馬>が?と思って、案内板を斜め読みした。ほとんど頭に入らなくて、勝海舟の名前と<龍馬>が下田に立ち寄ったことだけが頭に残った。…今その詳細をネットで検索したが、煩わしいので省略しよう。
二つ目は、大きな<錨>だ。また<錨>だ!というのも、灯台巡りの旅を始めてから、海沿いの公園などに、この本物の<錨>がオブジェとして鎮座している姿をよく目にするからだ。見るたびに、なんでこんなところに<錨>があるんだと思った。だが、今回はその疑問がすぐにとけた。台座だったかな、案内板に<横須賀海上自衛隊寄贈>とあったような気がする。さらに案内文には、すぐ目の前の海に、ペリーの艦船が、おそらく旗艦船<サスケハナ>だろう、<錨>を下したらしいのだ。なるほど、<錨>つながりか。それにしてもと、目の前の海を見た。こんなに近いところに停泊したのか!ちなみに、ペリーの旗艦船は、全長80メートル弱の大型フリゲート船だった。自分が乗った遊覧船<黒船サスケハナ>は35メートルで、その倍以上の大きさだったのだ。
三つ目は、何と<足湯>だ。公園内に、いくつかあるしゃれた東屋の一つが、車座に十人ほど腰かけられるようになっている。近寄って、ちょっと手を浸してみた。あったかい、ちょうどいい湯加減だ。足の甲に湿疹ができていなければ、間違いなく、軽登山靴を脱いで、腰かけたと思う。足を拭くためのタオルを車に取りに行く、という煩わしさも克服しただろう。まあ、次回だな。ただし、<次回>があるのかないのか、その辺は深く考えなかった。
さあ、本当に引き上げよう。雨は降っていなかったような気がする。歩いて、道路の反対側のコンビニへ寄って、朝食用の菓子パンとおにぎりを買った。そのあと、駐車場を出て、信号を右折。ホテル前の駐車場スペースに車を止めた。整理係の<小料理屋の大将>はいなかった。まだ三時前で、チェックイン前だ。
車から降り、歩いて<すき家>へ行った。今日は、機械での注文に迷うこともなかった。なんとなく、カレーが食べたいような気がして、<オム牛カレー>の大盛りを注文した。¥1000ほどだ。ちょっと高いような気もしたが、そんなもんでしょ。少し待たされた。きっと、オムレツの調理に手間取ってるんだ。レジカウンターに店員が出てきた。レジ袋に入った<オム牛カレー大盛り>を受け取り、カンターに置いてあった箸とか紅ショウガの小袋とかを取って、出ようとした。と、その若い店員が<スプーンはいいんですか>と声をかけてきた。なるほど、カレーを食べんるんだ。<お、忘れていたよ>と少し表情を崩して、袋の中に入れた。<すき家>で、これまでで一番愛想のよい店員だった。
駐車場に戻った。トートバックの中に、飲料水などを入れ、カメラバックを背負って、ホテルに入った。一階ロビーは薄暗かった。ふと思って、陳列してあった、土産物を眺めた。<地域クーポン券>¥2000で買ってしまおうというわけだ。受付の卓上ベル=呼び鈴を押すと、隣の部屋から爺がすぐに出てきた。財布から<地域クーポン券>を取り出し、その旨を言って爺に渡した。
爺を待たせて、陳列台の土産物を選んだ。ロクなものはなかったが、ま、なるべく日持ちするものがいい。などと、あれやこれや迷ってしまい、思いのほか、時間がかかった。ふと見ると、爺が、所在なげに、いや、ちょっとイラついた感じでカウンターの中に突っ立っている。
もう、どうでもよくなって、とりあえず¥2000分の土産物を手にして、カンターへ行った。それを、爺は電卓で律儀に計算した。¥2000、ちょうどにはならない。土産物の価格設定が、ちょうどにはならないようになっている。したがって、おつり分\180くらい、損したことになる。ケチケチしたこと書くなよ。ちなみに、買ったのは、<金目鯛スープ12食入り>を二袋、<漁師のふりかけ>一袋、それから、カツオの一口大のおつまみ、これは今手にないので正式な商品名はわからない。というのも、翌日、爺に無理を言って値段の同じ<漁師のふりかけ>と交換してしまったからだ。びっしりと袋に詰まった、こげ茶の、サイコロ型のおつまみは、いくら眺めても、固くて、まずそうだったのだ。
エレベーターで四階に上がった。ひとの気配は全くない。時間的には午後三時前だったと思う。ドアノブに、白いレジ袋がかかっていた。部屋に入った後で、中に入っているものを取り出した。浴衣とシーツとバスタオルとアメニティ類だった。シーツは、面倒なので交換しなかった。すぐに着替えた。糊のきいた浴衣にそでを通し、部屋を出た。貴重品のポーチは、金庫に入れたが、めんどうなので鍵は、部屋のどこかに隠した。どこに隠したのか、今となってはもう思い出せない。
温泉は、昨日にまして最高だった。というのも、一番風呂というやつで、誰もいない。広々した洗い場も湯船も、きれいに清掃されていて気持ちがいい。それに、ちょうどいい湯加減で、自分としては、これほど長時間、温泉につかって、くつろいだことはない。温泉めぐりも悪くないなと思ったほどだ。昨日と同じように、湯船の中を歩いて、窓際へ行き、窓ガラスを手でこすって、外の景色を眺めた。雨が降り出していた。それもかなり強い。風も強い。台風の影響だろうか。五回目の旅で、初めて雨に遭遇した。いままで、運が良すぎたのだ。


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2021
03/03
Wed.
10:17:58
<灯台紀行・旅日誌>2020
Category【灯台紀行 南伊豆編】
<灯台紀行・旅日誌>2020南伊豆編#9 下田観光3 黒船遊覧船
来た道を戻った。だが、気まぐれを起こし、途中で右折して、下田市の市街地<ペリーロード>などのある一角を抜けて行った。そろそろ走りながら、たしか<黒船遊覧船>の乗り場あたりに、海を臨めるところがあったはずだと思った。
海沿いの広い道に出て、そのまま、宿の方へ向かって走った。と右側に<遊覧船>の乗り場らしきところが見える。その隣にも、なにやら大きな施設ある。右折。なんだろうとおもって、施設の方へさらに右折。駐車場の入り口がなかなか見つからない。施設の切れたところに、看板があり、右折。ちょうど、施設の下が駐車場になっている。ゆるゆる走りながら、様子をうかがう。要するに、こ洒落た土産物店を集積した施設なのだ。ま、用はない。そのまま駐車場を出た。
今度は、<黒船遊覧船>の乗り場へ車を回した。駐車場には、意外にもたくさんの車が止まっていた。しかも、岸壁際は、ワンボックスカーなどが横付け、占領している。家族旅行だろう、子供がちょろちょろ、ガタイのいい若い父親は、釣り竿などを振り回している。防波堤灯台を見るには、あそこが一番いいとこなんだけどな。仕様がない、スペースを見つけて車を止めた。
とたんに、ぽつぽつ来た。おいおい、雨マークは三時過ぎからだろう。時計を見たのだろうか、今調べると、まだ午前中、十一時前だった。今日の予定としては、天気予報を信用して、雨の降る前に、つまり、三時前には宿へ戻るつもりでいた。なのに、雨かよ!再び、車の中に戻って、この後どうしようかと思案した。と、アナウンスが聞こえた。<黒船遊覧船>だ。あと五分で出航らしい。
<黒船遊覧船>など、乗るつもりはなかったのだ。だが、その時は、気持ちが一気に高揚して、バタバタと、乗船券売り場に駆け込んだ。料金は¥1250。意外に安いなと思った。それよりも、あわてていたので、マスクを忘れた。窓口の若者に、その旨告げると、脇から真新しい箱を取り出し、中から一枚くれた。しかも無料で。折りしも、アナウンスが、乗船をせかせている。もらったマスクをつけながら、船着き場へ急いだ。出航寸前で、乗客の姿は見えず、係員が四、五名、陸と船にいて、なにか仕方なく、自分を待っているかのようだった。
よくいるよな~、こういう奴!それが自分だった。船に乗り移った瞬間、即、出航と相成った。ふと見まわすと、一階には自分のほか客は誰もいない。その辺にいた係の若者に、灯台を撮りたいのだが、どの位置がいいのか、訊ねた。体格のいい若者は、右側かな、と人の顔も見ないでそっけなく言い放った。不愛想な奴だ、たぶん学生のバイトだろう。
自分が位置していたのは、今思えば、一階の船尾だ。二階?に上がることもできただろうが、これは、即座に却下した。一階の方が、目線が灯台と同じになる。動き始めてから、ふと思って、船の前の方へ行ってみた。座席が並んでいる。が、横にガラス窓がはまっている。これはだめだ。さらにその先、船首へ行こうとした。だが、ドアがあり、何となく行けないような感じ。そばに係員でもいたら、聞くこともできたろうが、船内に人影はない。その時は、乗客や係員はどこへ行ったのだろう、と疑問に思わなかった。
先ほど、この<遊覧船>のHPを見た。船の写真を見ると、二階が展望デッキになっていて、白い手すり柵の手前に観光客がたくさん乗っていた。そうだよな、みんな、眺めのいい二階へ行くのはあたり前のことだ。それと、この黒船の名前は<サスケハナ>という。現地で、船の横っ腹にあったこの文字を見た時は、なんかの冗談かと思った。無知より怖いものない!<サスケハナ>とは、ペリー来航時の旗艦船の名前で、アメリカ原住民の言葉で<広く深い川>という意味だそうだ。以上、ウィキペディアより。
船が出発した。たしかに、さっきの無愛想な若造の言っていた通り、船尾の右側が、灯台を見るには好位置だ。というのも、船は、下田湾を左回り、すなわち、時計の針とは反対の方向で航行し、湾をぐるっと一周して戻ってくる。要するに、灯台は、沖へ向かって、右側に位置していたのである。
白い防波堤灯台が、目の前に見えてきた。だが、背景がよろしくない。<犬走島>がバックになっている。しかも、空に色がない。とはいえ、海上からの眺めも一興で、これはこれで面白かった。カモメもいっぱい飛んでいたしね。
白い灯台の脇を通り過ぎ、沖へ向かっていく。が、今度は、赤い防波堤灯台の手前で、左に急カーブだ。これは、思いもかけないことで、まったく近寄ることができなかった、赤灯台を間近に見ることができた。もっとも、いまにも降り出しそうな空模様で、空も海も鉛色だ。写真的には、モノにはなるまい。と思いつつも、かなりしつこく、かつ慎重に撮った。赤灯台のフォルムと海の中にたたずむ姿が気に入ったのだ。
船が左旋回したので、船尾の右側から、真ん中辺に移動して、だんだん小さくなっていく、赤灯台を撮り続けた。尾を引く波しぶきに目を落とした瞬間、<モロイ>の一節を思い出しかけた。だが、正確には思い出せなかった。赤灯台はとうとう豆粒になり、もう判別できなくなっていた。もう一度、天気の良い日に、<黒船>に乗りに来る必要があるな。とはいえ、必ず来るぞ、という強い気持ちにはならなかった。もう来られないかもしれないと思ったような気もする。
<黒船>は、さらに左旋回を続け、陸へ向かった。低い山並みの下に、泊まっているホテルも見えた。その白い建物の四階あたりをじっと見た。あのあたりから、昨晩、漆黒の海に点滅する、緑や赤の光を見たのだ。かなり遠いなと思った。係船岸壁につけるために、船が陸と並行の位置になった。大きな貨物船が見えた。こいつは、湾の中に、昨日からずっと止まっていて、動かない。横を通るときに何枚か撮った。船の形が面白いのだ。まあ、この種の趣味趣向は、男児の残滓なのかもしれない。
およそ20分のクルージングだった、ようだ。船が岸壁にしっかり固定された後、係員が先導して、乗客が下りた。幾人もいなかった。一階に誰もいないのは当たり前だと思った。広めの岸壁に下り立った。と、向かいに<海保>の巡視艇が係船されていた。<黒船>に乗るときは、バタバタしていたからだろう、気づかなかった。ここにもあるのか?というのは、先ほど、ちょっと休憩したところにも同じくらいの大きさの巡視艇があったからだ。船全体を真横から撮った。横っ腹に<海上保安庁>の文字が目立つ。記念写真だよ。
雨がぽつぽつ落ちてきた。急いで、車に戻った。アナウンスが、午前中最後の乗船を告げていた。今度の出航は十一時半らしい。そうか、俺は十一時に乗ったわけだ。三十分おきの出航、採算が合うのか?などと余計なことを思った。雨じゃあ~、もう撮れないな。運転席に座って、これからの予定を考えた。雨でにじんだフロントガラス越しに、岸壁に依然として横付けされている家族連れのワンボックスカーが見えた。よちよち歩きの女の子を追いかけて、若い母親が走りまわっている。褐色に焼けていて、サンダル履きのラフな格好。海辺でよく見る、さばけた感じの女性だった。
時計を見たのだろうな。宿に戻るにはまだ早すぎた。そうだ、あの公園へ行こう。広い駐車場があり、正面に下田湾が見渡せる。車の中でひと寝入りしてもよし、空模様次第では、望遠で防波堤灯台が狙えるかもしれない。その整備された海沿いの公園は、ちょうど泊まっているホテルの真ん前だった。近すぎて、まだ行っていなかった。





来た道を戻った。だが、気まぐれを起こし、途中で右折して、下田市の市街地<ペリーロード>などのある一角を抜けて行った。そろそろ走りながら、たしか<黒船遊覧船>の乗り場あたりに、海を臨めるところがあったはずだと思った。
海沿いの広い道に出て、そのまま、宿の方へ向かって走った。と右側に<遊覧船>の乗り場らしきところが見える。その隣にも、なにやら大きな施設ある。右折。なんだろうとおもって、施設の方へさらに右折。駐車場の入り口がなかなか見つからない。施設の切れたところに、看板があり、右折。ちょうど、施設の下が駐車場になっている。ゆるゆる走りながら、様子をうかがう。要するに、こ洒落た土産物店を集積した施設なのだ。ま、用はない。そのまま駐車場を出た。
今度は、<黒船遊覧船>の乗り場へ車を回した。駐車場には、意外にもたくさんの車が止まっていた。しかも、岸壁際は、ワンボックスカーなどが横付け、占領している。家族旅行だろう、子供がちょろちょろ、ガタイのいい若い父親は、釣り竿などを振り回している。防波堤灯台を見るには、あそこが一番いいとこなんだけどな。仕様がない、スペースを見つけて車を止めた。
とたんに、ぽつぽつ来た。おいおい、雨マークは三時過ぎからだろう。時計を見たのだろうか、今調べると、まだ午前中、十一時前だった。今日の予定としては、天気予報を信用して、雨の降る前に、つまり、三時前には宿へ戻るつもりでいた。なのに、雨かよ!再び、車の中に戻って、この後どうしようかと思案した。と、アナウンスが聞こえた。<黒船遊覧船>だ。あと五分で出航らしい。
<黒船遊覧船>など、乗るつもりはなかったのだ。だが、その時は、気持ちが一気に高揚して、バタバタと、乗船券売り場に駆け込んだ。料金は¥1250。意外に安いなと思った。それよりも、あわてていたので、マスクを忘れた。窓口の若者に、その旨告げると、脇から真新しい箱を取り出し、中から一枚くれた。しかも無料で。折りしも、アナウンスが、乗船をせかせている。もらったマスクをつけながら、船着き場へ急いだ。出航寸前で、乗客の姿は見えず、係員が四、五名、陸と船にいて、なにか仕方なく、自分を待っているかのようだった。
よくいるよな~、こういう奴!それが自分だった。船に乗り移った瞬間、即、出航と相成った。ふと見まわすと、一階には自分のほか客は誰もいない。その辺にいた係の若者に、灯台を撮りたいのだが、どの位置がいいのか、訊ねた。体格のいい若者は、右側かな、と人の顔も見ないでそっけなく言い放った。不愛想な奴だ、たぶん学生のバイトだろう。
自分が位置していたのは、今思えば、一階の船尾だ。二階?に上がることもできただろうが、これは、即座に却下した。一階の方が、目線が灯台と同じになる。動き始めてから、ふと思って、船の前の方へ行ってみた。座席が並んでいる。が、横にガラス窓がはまっている。これはだめだ。さらにその先、船首へ行こうとした。だが、ドアがあり、何となく行けないような感じ。そばに係員でもいたら、聞くこともできたろうが、船内に人影はない。その時は、乗客や係員はどこへ行ったのだろう、と疑問に思わなかった。
先ほど、この<遊覧船>のHPを見た。船の写真を見ると、二階が展望デッキになっていて、白い手すり柵の手前に観光客がたくさん乗っていた。そうだよな、みんな、眺めのいい二階へ行くのはあたり前のことだ。それと、この黒船の名前は<サスケハナ>という。現地で、船の横っ腹にあったこの文字を見た時は、なんかの冗談かと思った。無知より怖いものない!<サスケハナ>とは、ペリー来航時の旗艦船の名前で、アメリカ原住民の言葉で<広く深い川>という意味だそうだ。以上、ウィキペディアより。
船が出発した。たしかに、さっきの無愛想な若造の言っていた通り、船尾の右側が、灯台を見るには好位置だ。というのも、船は、下田湾を左回り、すなわち、時計の針とは反対の方向で航行し、湾をぐるっと一周して戻ってくる。要するに、灯台は、沖へ向かって、右側に位置していたのである。
白い防波堤灯台が、目の前に見えてきた。だが、背景がよろしくない。<犬走島>がバックになっている。しかも、空に色がない。とはいえ、海上からの眺めも一興で、これはこれで面白かった。カモメもいっぱい飛んでいたしね。
白い灯台の脇を通り過ぎ、沖へ向かっていく。が、今度は、赤い防波堤灯台の手前で、左に急カーブだ。これは、思いもかけないことで、まったく近寄ることができなかった、赤灯台を間近に見ることができた。もっとも、いまにも降り出しそうな空模様で、空も海も鉛色だ。写真的には、モノにはなるまい。と思いつつも、かなりしつこく、かつ慎重に撮った。赤灯台のフォルムと海の中にたたずむ姿が気に入ったのだ。
船が左旋回したので、船尾の右側から、真ん中辺に移動して、だんだん小さくなっていく、赤灯台を撮り続けた。尾を引く波しぶきに目を落とした瞬間、<モロイ>の一節を思い出しかけた。だが、正確には思い出せなかった。赤灯台はとうとう豆粒になり、もう判別できなくなっていた。もう一度、天気の良い日に、<黒船>に乗りに来る必要があるな。とはいえ、必ず来るぞ、という強い気持ちにはならなかった。もう来られないかもしれないと思ったような気もする。
<黒船>は、さらに左旋回を続け、陸へ向かった。低い山並みの下に、泊まっているホテルも見えた。その白い建物の四階あたりをじっと見た。あのあたりから、昨晩、漆黒の海に点滅する、緑や赤の光を見たのだ。かなり遠いなと思った。係船岸壁につけるために、船が陸と並行の位置になった。大きな貨物船が見えた。こいつは、湾の中に、昨日からずっと止まっていて、動かない。横を通るときに何枚か撮った。船の形が面白いのだ。まあ、この種の趣味趣向は、男児の残滓なのかもしれない。
およそ20分のクルージングだった、ようだ。船が岸壁にしっかり固定された後、係員が先導して、乗客が下りた。幾人もいなかった。一階に誰もいないのは当たり前だと思った。広めの岸壁に下り立った。と、向かいに<海保>の巡視艇が係船されていた。<黒船>に乗るときは、バタバタしていたからだろう、気づかなかった。ここにもあるのか?というのは、先ほど、ちょっと休憩したところにも同じくらいの大きさの巡視艇があったからだ。船全体を真横から撮った。横っ腹に<海上保安庁>の文字が目立つ。記念写真だよ。
雨がぽつぽつ落ちてきた。急いで、車に戻った。アナウンスが、午前中最後の乗船を告げていた。今度の出航は十一時半らしい。そうか、俺は十一時に乗ったわけだ。三十分おきの出航、採算が合うのか?などと余計なことを思った。雨じゃあ~、もう撮れないな。運転席に座って、これからの予定を考えた。雨でにじんだフロントガラス越しに、岸壁に依然として横付けされている家族連れのワンボックスカーが見えた。よちよち歩きの女の子を追いかけて、若い母親が走りまわっている。褐色に焼けていて、サンダル履きのラフな格好。海辺でよく見る、さばけた感じの女性だった。
時計を見たのだろうな。宿に戻るにはまだ早すぎた。そうだ、あの公園へ行こう。広い駐車場があり、正面に下田湾が見渡せる。車の中でひと寝入りしてもよし、空模様次第では、望遠で防波堤灯台が狙えるかもしれない。その整備された海沿いの公園は、ちょうど泊まっているホテルの真ん前だった。近すぎて、まだ行っていなかった。





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