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此岸からの風景

<日本灯台紀行 旅日誌>オヤジの灯台巡り一人旅 長~い呟きです

2021

06/08

Tue.

22:20:49

<灯台紀行・旅日誌>2020 

Category【灯台紀行 南伊豆編

<灯台紀行・旅日誌>2020南伊豆編#11 ホテル宿泊

温泉から戻ってきた。さあ、ビールだ。と、その前に、窓の外の下田湾を眺めた。ざあ~ざあ~雨が降っていて、ぼやけている。風も強くて、道路沿いの背の高い椰子の木がぐらぐら揺れている。早めに引き上げてよかったよ。ビールは冷えていた。初日に、備え付けの小型冷蔵庫を確認したら、当たり前のことだが、ちゃんと冷蔵できそうだ。とはいえ、真夏と違い、冷えたビールは、それほどありがたくなかった。この時は、むしろ、冷たすぎるなと感じたほどだ。

たしか、午後の三時過ぎだ。メモによると<14:30宿~温泉15:00>とある。夕食にはまだ早い。と思ったが、目の前のすき家のレジ袋から<オム牛カレー>を取り出した。ビールのつまみに、ちょっと食べたいような気がしたのだ。と、その時、袋の下に何かある。金庫のカギだった。隠したところを絶対に忘れない場所だ。いや、たとえ忘れたとしても絶対大丈夫な場所だろう、と思いついたのが<オム牛カレー>の下だったのだ。ただし、自分で隠した場所をすっかり忘れてしまい、鍵を見た時に<こんなところに!>とちょっと驚いたわけで、これはもう、トンマの極みだ。歳は取りたくないものだ。

<牛>も<カレー>も、まずくはない。だが、いつもの味だ。ただ、<オム(レツ)>だけが手作りの味がした。<つまみ>のつもりが、腹が空いていたのだろうか、半分くらい食べてしまった。そのまま、全部食べることも、もちろんできた。が、そこは少し自制した。夕食に取っておこう。しっかりふたを閉めた。いや、なかなかしっかりとは閉まらないので、少し手間取った。やや食い足りない感じがして、座卓の上に並べてある、お菓子類をなにか食べたような気もする。食べ終えると、少し眠くなってきた。取り立てて、やることもない。部屋の明かりとテレビを消して、布団に横になり、そのまま寝てしまったようだ。

<17:00>に起きた。部屋の中はもちろんのこと、窓の外もかなり暗くなっていた。近寄って、重いサッシ窓を開けた。雨が少しふきこんできたのかもしれない。あるいは、風が強かったのか、すぐに窓を閉めた。うす暗くなった海の中に、緑の点滅が鮮やかだった。それに比べ、少し沖の赤の点滅は、昨晩より弱々しい感じがした。周辺にあるオレンジの点滅にいたっては、ほとんど色が見えないほどだった。

ま、問題は<神子元島灯台>の明かりだ。そのピカリの明かりを撮ろうと、今日は三脚を部屋まで持ってきているのだ。ところが、強い雨のせいなのだろうか<ピカリ>が、なんだか心もとない。光がこちらに届かないのだ。十数秒待って、今一度、じっと光の方向を見た。オレンジ色っぽく、にじんでいる。雨に打たれた裸電球のようだった。

だから!と、後悔した。昨晩、面倒でも、車に三脚を取りに行けばよかったんだ。いや~、もう一人の天邪鬼が言った。あんな弱い光じゃ、撮れっこないよ。ま、そうだ。前回の南房総旅で経験している。広大な夜の海、その中で点滅する、豆粒大の灯台の光。たとえ写ったとしても、写真にはならないのだ。そう納得して、三脚は広げなかった。

座卓の前に座って、残り半分の<オム牛カレー>を食べた。食い足りない感がして、コンビニで買った赤飯握りを一個食べたかも知れない。そのあと、ノートに、ざっとメモ書きした。文字を書くことがほとんどないわけで、まさに、ミミズが、のたくったような字だ。ま、自分が読めればいいのだ。

それにしても、字はへたくそだ。子供の頃に、字の書き方をちゃんと覚えなかったからだろう。そのことが、後々、人生に過大な影響を与えるとは、思ってもみなかった。つまり、字が下手な故に、はがきや手紙などが億劫になり、人との交通をないがしろにしてしまったのだ。いや、そうとばかりともいえない。たとえ、字が人並みに書けたとしても、はがきや手紙を、好んで人に出すことはしなかったろう。何しろ、<文章>はもっと苦手だったのだ。

ワープロ、パソコンのおかげで、下手な<字>で、恥をかくことはなくなった。だが<文章>は依然として、うまく書けない。いや、ついついウソを書いてしまう。そのことが、一番やりきれない。

立ち上がって、窓際へ行った。窓ガラスに雨がふきつけている。海は真っ暗だった。かろうじて、手前の緑の点滅だけが見える。赤やオレンジの点滅は、ほとんど見えない。十数秒おきの<神子元島灯台>からの<ピカリの明かり>も、海上の強い風雨にさえぎられ、ほとんど見えなくなっていた。これといった、感慨もない。気持ちも動かなかった。厚手のカーテンを閉めた。おそらく、その後、テレビでもちょっと見たのだろう。そして、部屋の電気を消し、テレビも消して、寝てしまった。雨風の音は、ほとんど気にならなかった。

夜間トイレで、一、二時間おきに起きたはずだ。そう、たしか、一回だけ、窓際へ行き、カーテンをちょっとめくって、海を見たような覚えがある。依然として、雨風が強い。台風が、西日本に近づいている。その影響だろう。かろうじて元気だった緑の点滅も、心もとない。明日の帰路<天城越え>がちょっと気になった。

三日目
<7:00起床>。まずテレビをつけ、洗面、朝食、排便。排便は、ほとんど出なかったような気がする。着替え、ざっと部屋の整頓。布団は敷きっぱなしのまま、掛け布団を半分めくっておいた。その上に、枕と、ざっとたたんだ浴衣をおいた。

そうそう、昨晩のことで書き忘れたことがあった。コップの水を、座卓の上の長細い敷物にこぼしてしまった。ティッシュですぐに拭いたが、なにか、茶色くなっている。座卓本体の塗装の色ではない。敷物から浸み出したものだ。今朝見ると、そのあたりが、少し茶色くなっている。まずかったな。といっても申告するほどのことじゃないだろう。すぐに頭から流した。

身支度など、すべてを終えて、カメラバックまで背負った。と、そうだ、宿泊した室内の写真を撮るのを忘れていた。バックをおろし、中からカメラを取り出した。丹念に、室内を撮った。これらの記念写真は、後々、いや、帰宅後に見た時ですら、なにがしかの感情を呼び覚ます。何と言うか、もう二度と訪れることもない、生涯に一度の空間と時間。人間的郷愁、とでも言っておこう。

廊下に出た。鍵はかけなかった。エレベーターに乗って、一階に下りた。と、大きな掃除機で、おばさんがロビーを掃除している。そのホースをまたいで、受付へ向かった。おばさんが、元気のよい声で<大丈夫ですか、すいません>と声に出した。<大丈夫、大丈夫>とおばさんの方へ顔を向けながら答えた。やけに愛想がいいなと思った。むろん、嫌な感じはしない。むしろ好ましく感じた。

受付カウンターには、爺がいたような気がする。精算を、と言って、ポーチから財布を取り出した。爺は、なにらや、下でごそごそしながら、書類を探し出し、計算した。たしか<Goto割りで>と言ったような気もする。一万円札を出して、お釣りをもらった。そのあと、前に書いたように、<カツオのつまみ>を<漁師のふりかけ>にかえてもらった。<値段は同じですよね>と、爺は自分に言い聞かせるように言った。嫌な顔一つしなかった。

精算を終えて<お世話さま>と声に出して、出入り口へ向かった。どこからともなく<小料理屋の大将>も現れて、<ありがとうございました>と会釈された。外に出た、雨がざあ~ざあ~降っている。急ぎ足で車へ向かった。トートバックとカメラバックをさっと車に積み込み、運転席に滑り込んだ。一応、ナビを自宅にセットした。


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