此岸からの風景
<日本灯台紀行 旅日誌>オヤジの灯台巡り一人旅 長~い呟きです
2022
01/21
Fri.
11:51:39
<灯台紀行・旅日誌>2020年度版
Category【灯台紀行 愛知編】

愛知県知多半島 野間埼灯台 2020-12-6 11:34
<灯台紀行・旅日誌>2020 愛知編#1プロローグ~往路
時間を戻そう。今は、2020年12月4日、金曜日だ。おそらく、十日間天気予報を見たのだろう。というのも、14日の月曜日は伊良湖ビューホテル、15日16日17日は、三重県鳥羽磯部付近のビジネスホテルをすでに予約してあったからだ。前回の<福島・茨城旅>の旅日誌をやっと書き上げた直後で、次回七回目の<灯台巡り>を、愛知県渥美半島の伊良湖岬灯台、三重県紀伊半島の安乗埼灯台、大王埼灯台などに照準していたのだ。
四泊五日の旅日程も、ほぼ頭の中で確定、あとは、出発までの時間で<福島・茨城旅>の撮影画像の補正を終わらせるつもりだった。ところが、この夜、晴れマークがついていた14日の天気が怪しくなってきた。せっかく<伊良湖ビューホテル>の予約が取れていたのに、しかたない、キャンセルだ。むろん、その後の鳥羽のビジネスホテルもキャンセルし、旅の日程を再考した。
十二月の前半から全国的に晴れが続いていた。<灯台巡り>をするには絶好の日和だ。だが、自分に課した、旅日誌の執筆と撮影画像の補正を終わらせなければ、旅には出られない。と、思い込んでいる。しかし、今回は、自分で決めた約束を破った。6日7日8日9日と、愛知県には四日連続で晴れマークがついている。この日程をやり過ごしたら、十二月の灯台旅は流れてしまうかもしれない。
おおよそ、十二月の中盤までは、寒さもそう厳しくない。だが、後半、クリスマス前後には、毎年寒波がやってきて、寒い思いをしている。したがって、中盤がだめなら、前半に行くしかないだろう。それに晴れマークもついている。四日の金曜日の夜も更けて、日付が五日に変わっていたと思う。つまり、六日から宿泊するのなら、前日予約になってしまう。いまから、ホテルは予約できるのか?
<楽天トラベル>でさっそく調べ出した。調べているうちに、気持ちが変わって、予定を変更した。つまり、フェリーで三重県側には行かないで、巡る灯台は、愛知県の野間埼灯台と伊良湖岬灯台だけにした。初日に一気に知多半島へ移動し、その先端に位置する野間埼灯台へ行く。そこで二泊して、そのあと、戻る感じでぐるっと回り込み、渥美半島の伊良湖岬灯台へ移動する。突然の予定変更の理由には、いまだ確実な下準備ができていない三重県側の灯台たちを、この期に及んで、調べなおすのが億劫になった、ということもある。
伊良湖岬灯台と野間埼灯台は、それぞれ、愛知県の渥美半島と知多半島の先端にあり、普通なら、セットにして巡るべきだろう。ところが、移動が大変なのだ。距離にして150キロ、時間にして三時間半もかかる。少し前までは、半島間にフェリーがあったのが、今は廃止されている。そうした理由で、伊良湖岬から出ているフェリーで三重県側にわたり、渡航時間は小一時間ほどらしい、紀伊半島の南西部の灯台たちを見て回ろうという気になったわけだ。その方が効率的だと思ったような気がする。
灯台巡り、とくに灯台写真を撮るには、下調べが大切だと思い知らされている。事前に、撮影の位置取りを、ほぼ確実に頭に入れておいても、現場では右往左往することが多い。下調べもせず、手ぶらで行くのは愚の骨頂だろう。一応、伊良湖岬灯台の下調べは終わっている。それに、新たな照準とした、野間埼灯台もネットで検索する限り、さして難しいロケーションではない。それに、今回は、一つの灯台に二日かけることにしたので、極端に綿密な下調べは必要ないのだ。
野間埼灯台も、伊良湖岬灯台と同様、夕日がきれいな所らしい。これまでの経験から、灯台に夕日や朝日を絡めて撮るには、とにもかくにも、灯台に近い宿に泊まるのがよろしい。ま、近いといっても、四、五キロ離れていても問題はない。というわけで、該当する宿を探し、日程に合わせる作業を、夜中の三時頃までやった。
頑張った、というか、夢中になっていた。その甲斐あって?まあまあ、満足のいく結果を得られた。すなわち、野間埼付近の、食事つきの旅館を二泊、伊良湖岬のすぐ近くのビジネスホテルを二泊、予約した。前者の食事つきは、これまでの慣例に反するが、一泊二食付きで12000円、その上<Goto割り>で安くなるので問題ない。とにもかくにも、灯台に近い宿がいいのだ。
旅の前日、五日の土曜日の朝は、前の晩、夜更かしたにもかかわらず、眠気はなかったと思う。それよりも、旅の準備を頭の中で、ざっと思い浮かべ、直ちに実行していった。慣れたもので、車への荷物の積み込みなど、午後の二時前にはすべて完了していた。ゆっくりくつろいで、早めの夕食、夜の八時すぎには寝ていたと思う。もっとも、いつものように、夜間トイレで一、二時間おきに起きている。だが、興奮して眠れないということはなかった。
出発の日、六日の日曜日は、午前三時半に、目覚ましが鳴る前に目が覚めた。頭も覚めていて、ためらうことなく起床、ゆっくりと自分のペースで出発の準備をした。お茶づけなどを食べ、便意を催促したが、いつもの排便時間よりは、そうとう早い。うんこは出なかった。玄関ドアを出る前に、お決まりのように、虚空のニャンコに向かって、行ってくるよ、と声をかけた。一瞬、もうこの家に帰ってこられないかもしれない、という不安を感じた。いや、ちょっと、思ってみただけだ。
午前五時出発。まだ真っ暗だった。最寄りの圏央道のインターから入り、六時には、厚木に到達していた。青梅からの断続的なトンネル走行は、トンネル内が外より明るいので、むしろ外よりも走りやすかった。そのあと、東名、第二東名と乗り継いだ。たしか御殿場あたりだっただろうか、富士山が右手に見えた。それも、なんというか薄赤紫色の幻想的な富士だった。
左側の稜線がものすごく急で、北斎の<赤富士>を想起した。頭に少し冠雪している程度で、赤土色の斜面に朝日があたっている。その周辺に、雲なのか靄なのか、白いもやもやしたものが漂っている。幽玄を感じた。北斎の<凱風快晴>の稜線は、やや誇張しているなと思っていたが、まさに、その通りの、切り立った稜線が、目の前に見える。というか、横に見える。第二東名を走っているわけで、現地点はほぼ山の中だ。北斎がこの位置から富士を見たとも思えないが、この近辺だったことに間違いないだろう。
北斎は、どこで朝日のあたる富士を見たのだろうか。数百年の間<赤富士>を超える富士は出現していない。そして、今後も出てこないだろう、とひそかに思った。
・・・理由はない。単なるミスだ。ナビに従って、高速から降りてしまった。古いナビだから、第二東名が貫通していることを知らないのだ。<第二東名 豊田方面>の標識がちらっと見えたが、後の祭りだった。ま、いい。高速走行にも飽きていた。気分転換に一般道を走るのもいいだろう。というわけで、次の高速入口までたらたら走って、また高速に乗った。その後は、伊勢湾岸道路に乗り、一気に、知多半島を南下した。野間埼灯台に着いたのは、午前十一時半頃だったと思う。およそ400キロ、六時間半かかった。だが、さほど疲れてもいなかった。
[edit]
2022
01/08
Sat.
09:39:53
<灯台紀行・旅日誌>2020年度版
Category【灯台紀行 福島・茨城編】

2020-11-10 6:26 茨城県日立市 日立灯台
<灯台紀行・旅日誌>2020福島・茨城編#15
日立灯台撮影4
真っ暗な中、車に乗り込んだ。灯台はすぐ近くだが、一応ナビをセットした。道順は頭に入っていないのだ。それから、日の出前、すごく冷えていたので、ウォーマーをはいて、上はダウンパーカを着た。これで、防寒対策はばっちりだ。ついでに、ネックウォーマーもしたような気がする。
公園の駐車場には、時間制限があり、たしか、チェーンが外れているのは八時から六時ころまでだったと思う。昨日確かめておいた。ということは、今の時間、横の道に路駐するしかない。早朝だから、大丈夫だろう。あっという間に、公園についた。まだ暗かった。周りは住宅街だ。そろそろと駐車して、音を立てないようにして外に出た。公園の中に入って、太陽の位置を確認した。目の前の海から昇ってくる感じだ。ところが、水平線に、雲がかかっていて、朝日を隠している。残念!海から昇る朝日は拝めない。
ま、それでも、水平線付近は、少し朱色に染まり始めた。何と言うか、朝日を隠している雲は、横にたなびいているわけで、もう少し時間がたてば、その雲の上に朝日が出てくるだろうと思った。たしか、軽いカメラを三脚に装着して、望遠の方は右肩から斜め掛けしていたように思う。カメラバックを背負わない、今回の旅で味をしめたスタイルだ。
朝夕の撮影に、三脚は必須だが、露出設定などは、全く頭から飛んでいた。したがって、ピンボケだけは防止できるかもしれないが、それ以上の写真は期待できないだろう。なので、ろくにモニターもしなかった。もっとも、三脚に装着したカメラの、しかも、暗い時のモニターは手間がかかり、面倒なのだ。しかし今思えば、面倒とか、そういうことを言っている場合ではなかった。日立灯台の早朝撮影は、おそらく、これが最初で最後になるだろうと予感していたのだから。
三脚を担いで、公園内をうろうろ、撮り歩いているうちに、待望の朝日が顔を見せてくれた。まだ、半分くらい、たなびく雲に隠れている。だが、それでも十分に朱色だ。いや、みかん色、と言った方がいいかもしれない。どこか温かみがある色合いなのだ。夕日の撮影と違って、朝日の場合は、刻一刻と明るくなっていくので、なにか、気分的にも明るくなっていく。
昨日下調べした、撮影ポイントは、まったく参考にならなかった。何しろ、太陽の位置が全然違う。今は、真正面の海の、少し上あたりにあって、灯台を真横から照らしている感じだ。期待していた、朝日がもろ灯台にあたる状況にはなっている。だが、イマイチ、感動がない。思うに、周りが明るすぎる。空の色も、すでにきれいな水色になっている。事物は地上に長い影を引き、芝生や樹木の緑色は、みかん色に中和され、変な色合いなっている。画面全体が、期待していた灯台も、スカッと抜けたみかん色に染まるわけではなく、なんとなく、ぼうっとしていて冴えない。それでも、撮らないわけにはいかないだろう。全エネルギーを傾注して、公園内をバタバタ移動しながら、撮りまくった。
かなりの時間がたって、犬のお散歩などで公園を訪れる人が多くなった。朝日は、あっという間に成長して、もうすでに立派な太陽になっていた。見晴らし用の小山に行く前に、太陽を灯台の胴体で隠して撮る、逆光写真を撮った。<番所灯台>に続いて、いわゆる、二匹目のドジョウを狙ったわけだ。だが、全然よくない。理由は、灯台の胴体が巨大な分、その影はもっと巨大になり、したがって、画面に占める割合が多すぎて、目障りなのだ。それに、辺りが明るくなってきたので、人影が気になってきた。なかには、公園の縁をぐるぐる歩いているおじさんもいる。朝の日課なのだろうけど、白い上着を着ているので、画面に入り込んだときに、目立つんだ。まあまあ、世界は君一人の物じゃないんだよ。
夜明けから、小一時間たっていた。撮影モードが解除され、アドレナリンが引いてきたのだろう、周りのことが少し見えてきた。まず、自分の車の前に黒い車が路駐している。撮影中にもちらっと眼に入った光景だ。その黒い車を、いま改めて見ると<ポルシェ>だった。早朝の公園と<ポルシェ>の取り合わせが、ちょっと面白かった。公園内の誰かの持ち物には違いないが、それが誰なのか、よくわからなかった。というのも、犬の散歩などで、けっこう人がいるのだ。
それから、でかいバイクの若い男だ。彼の存在にもかなり前から気づいてはいた。大柄で、黒い革ジャンを着ている。スマホで、盛んに朝日に絡めて灯台を撮っている。要するに、インスタか何かにアップする写真を撮っているのだ。最大限近づいた時に、と言っても二十メートルくらいはあったかな、顔をちらっと見た。やや長髪で、角ばった感じの顔だ。人懐っこさや、如才なさはなく、無表情、いかにもバイク野郎という感じだった。こっちから、声をかけてもよかったのだが、シカとした。というのも、まだ、見晴らし用の、小山からの撮影が残っていたし、明かりの具合も、刻一刻と変化している最中だった。立ち話をしている暇はない。こっちのそんな雰囲気を察知したのか、彼も話しかけてこなかった。そのうち、ポルシェの前に止めた、大きなバイクの方へ行ってしまった。
そういえば、前回の<爪木埼灯台>でも、陽が落ちる直前に、どこからともなくバイク野郎が来たっけ。年齢も同じくらいだ。二十代後半の若者だ。すんなり就職しなかったのだろうか、それとも、就職できなかったのだろうか、あるいは、会社勤めにうんざりして、退職届を上司にたたきつけ、バイクに乗って、旅に出たのだろうか、いずれにしても、朝日や夕日に染まる灯台を、スマホ撮影とはいえ、きっちりその時刻に撮りに来るからには、それなりの理由があるのだろう。バイクのエンジン音が、轟いた。あるいは、これから、バイトに行くのかもしれない。旅をしている割には、荷物がなかったな。いや、荷物は、自分と同じで、まだ宿に置いてあるのかもしれない。
小山に上がった。灯台が水平線にクロスする、お気に入りのベストポジションだ。海から出てきた太陽は、あっという間に灯台より高い所に昇ってしまった。要するに、明かりの具合は、斜光だ。早朝の厳粛な雰囲気は霧散して、辺りには、朝の生気が漲り、人間や生き物の気配がする。地上に描かれた、事物の黒い影は、しだいに薄くなり、その長さも、刻一刻と短くなるだろう。空の様子はと言えば、紫雲たなびく、というか、静かで、美しい瑠璃色だ。どこかで見たような、やさしい浮雲が漂っている。
天空はやすらぎの空間で、地上には生気が満ち満ちている。その真ん中に、灯台が立っている。わずかに、右側が光っている。光ることによって、その輪郭が、ますます確信できる。ローソク型の白い灯台は、もはや、地上の事物ではなく、かといって、天空に回収されもしない。ただただ、天地の間に佇立しているだけだ。写真を撮りながら、目の前に広がる光景に感動していたのだろう。
立ち去りがたくはなかった。十二分に撮ったような気がした。時計を見たのだろう。七時過ぎだった。いま撮影画像で確認した。引き上げるつもりで、小山を下りて、車へ向かった。と、灯台の前に来た時に、ふと立ち止まった。なにか、先ほど撮った同じ位置なのに、灯台が、というか公園全体の雰囲気が、違って見えた。なるほど、明かりの具合が変わっていたわけで、これはもう撮るしかないでしょう。構図的には同じだが、明らかに、今の方が、写真としてはきれいに撮れると思った。
そうこうしているうちに、画面の前を、犬を連れた老年の夫婦連れが、<ポルシェ>の方へ歩いていく。あ~、公園の周りをぐるぐる回っていた爺さんだ。なるほどね、長時間止まっている訳がわかったよ。朝の日課、公園の周りを小一時間歩く。その間、奥さんは、犬のお散歩をしながら待っている、というわけだ。見るともなく見ていると、二人とも、車の周りで、ぐずぐずしていて、なかなか出て行かない。が、二人の姿が消えた。やっと車に乗ったのだ。少しあって、腹に響くような、野太いエンジン音が響き渡った。さすが<ポルシェ>だ、エンジンの音からして、ちがう。ただね~、爺さんに<ポルシェ>って、どうなんだろう?おそらく、金持ちで、車が好きなんだろう。例えば、俺が金持ちで、車好きで、なおかつ<ポルシェ>が好きなら、やはり、爺になっても、<ポルシェ>に乗っているかもしれない。<ポルシェ>か~、貧乏人の僻みだ。自分には、やはり、<灯台巡り>の方があっているような気がした。
<福島・茨城旅>2020-11-7(土)8(日)9(月)10(火)収支。
宿泊費三泊 ¥12100(Goto割)
高速 ¥13400
ガソリン 総距離720K÷19K=38L×¥130=¥4900
飲食等 ¥4100
合計¥34500
<灯台紀行・旅日誌>2020福島・茨城編#1~#15
2020-12-11 脱稿。
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