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此岸からの風景

<日本灯台紀行 旅日誌>オヤジの灯台巡り一人旅 長~い呟きです

2020

07/10

Fri.

11:15:06

<灯台紀行・旅日誌>2020 

Category【灯台紀行 犬吠埼灯台編

<灯台紀行・旅日誌>#11
三脚を立て、カメラをセットしかかったとき、後方から、マウンテンバイクに乗った若者が数名、大きな声で話しながらやってきた。あれ~、と思っていると、自分から四メートルくらい離れた柵のところで、釣りを始めた。ほぼ等間隔に並んで、四人ほど、かがみこんで釣り針にえさをつけ、海へ向かって、大きく竿を振っている。

薄暗がりだったが、話声と顔つきで、外国人、それも中国人でも韓国人でもなく、東南アジア系の若者だとすぐにわかった。嫌なことに、その中でも体格の一番いい奴が、俺の隣にいる。ふと、集団で、あるいは、あいつらに襲われたら勝てないなと思った。だが、状況から判断して、いちゃもんをつけられる可能性は低い。シカとして、五分間インターバル撮影を続けた。とはいえ、若造に、根拠もなく、びくびくしている自分が情けなかった。

次第にあたりが暗くなった。灯台の胴体の真ん中あたりが、下からの照明で照らされ、そこだけが楕円形に明るくなった。用意してきた、アウトドア用のヘッドランプを頭に巻いて、ほとんど初めての夜間撮影に挑戦した。アジア系の若者たちは、予想に反して、暗くなっても立ち去らなかった。それどころか、懐中電灯を持参していて、手元を照らしながら、盛んにエサを交換しては、大きく竿を振っている。夜釣りに来たんだ!浜風の中、何語なのかな?タイとかベトナムとか、そんな感じの語音が飛び交っていた。

インターバル撮影の合間、若者たちの行動を横目でちらちら追いながらも、刻一刻と表情を変えていく、灯台周辺の光景を全身で感得していた。午後の、あの暑さと比べて、いまはかなり心地よい。むしろ、寒いほどだ。ヒートテックのモモシキをはき、長めのダウンパーカを羽織った。これでちょうどいい。ビスケットを少し齧り、水を飲んだ。腹の調子も少し良くなっていた。この時間に、こんなところで、写真を撮っている。念願がかなっている。世界の前に立っている。自分の人生を生きていると思った。

空と海が、漆黒の闇に覆われ、灯台が光を発し始めた。そう、問題は、あの光線を写真に撮ることだ。ネットで、犬吠埼灯台の写真を、いやというほど検索したが、左真横、一直線の光線をとらえた写真は、わずか一枚にすぎない。しかも、その写真は、<写真素材>として、有料で貸し出されていた。

天と海の間の暗闇を、一直線に走る灯台の光線。なんとまあ、ロマンがあるではないか!前に言った<作品>というのは、この五分インターバルで撮った写真群を、編集してスライドショーにする心づもりだったわけで、ラストは、いや、ラス前あたりに、この一直線の灯台の光線が、ぜひとも欲しいものだ。

ところが、丹念な検索の結果にもかかわらず、灯台の光線を撮る方法は、見つけられなかった。星空とか、夜景とか、それから、光線を多重撮影して、灯台の周りにぐるっとめぐらす方法はあったが、もっとも、多重撮影は自分の頭と腕がついていかないわけで、はなから試すことすらしていない。というよりも、灯台から光線が放射状に出ているというのは、いかにも、作り物の感じがして、いささか趣に欠ける。

だが、いちおう、灯台の光線を撮る方法を、自分なりに調べ上げ、メモしていた。手順はこうだ、モードはM、f値2.8、ss1秒から二分の一秒、ISO8000、いや、ほかにもメモがある。シャッタースピードssが長ければ長いほど光跡の幅が広がるとか、光線がカメラレンズに向かないタイミングをはかるとか、要するに、切れ端のネット知識だ。

実際はすべて役に立たなかった。これらのやり方では、むろんその場でいろいろ試したが、光線は撮れなかった。そもそも、何秒かおきに、ぐるぐる回っている光線を、左真一文字に来た時に写し撮ろうとするならば、シャッタースピードは、かなり早いものでなければなるまい。そんな瞬間は、あっという間に過ぎてしまうのだ。

今思ったのだが、光線が動かず、不動のまま、海を照らしているならば、上記の方法は有効なのかもしれない。いや、これも試していないので、わからない。要するに何もかもわからず、いや、今日の段階では、光線は撮れないのだ、ということがわかったわけだ。得心して、気持ちが覚めた。引き上げよう。カメラを三脚から外し、バックに収納した。

少し前に、二、三人仲間が加わった、アジア系の若者たちは、その後もまじめに?釣りを楽しんでいた。新たに加わった連中は、柵を乗り越え、三メートルほど下の、波消しブロックに降り立ち、座りこみ、釣り糸をたらしている。自分の隣の大柄な若者は、なかでも、釣りがうまいのか、何匹も釣り上げていた。

彼らが、どこから来たのか、何をしているのか、すぐには思いつかなかった。食いつめたような様子もないし、みな立派なマウンテンバイクを持っている。留学生なのかもしれない、あまり深くは考えなかった。考える必要もなかった。ただ、いちゃもんをつけられるのではないかと、最初、びくびくした自分を少し恥じた。

カメラバックを背負う前に、柵に両肘をついて、暗闇に浮かぶ灯台をつくづく眺めた。たしかに、光線は出ている。ある間隔をおき、右の方から光り始め、こちらに向かってピカリ、そのあとは、例の左真一文字の光線を、茫漠とした闇の中に放って、左うしろに消える。この循環を、一晩中続けているわけだ。

ただねぇ~、その闇に放たれる、左一文字の光線は、すごく薄くて、かすかに見える程度のものだ。しかも一瞬!あれを写真に撮ることなど、土台無理なのではないか、自分がネットで見た写真は、何か細工したものではないのかとさえ疑った。ま、いい、光線は撮れなくても、写真はたくさん撮った。撮れたはずだ!

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