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此岸からの風景

<日本灯台紀行 旅日誌>オヤジの灯台巡り一人旅 長~い呟きです

2020

11/29

Sun.

10:52:23

<灯台紀行・旅日誌>2020 

Category【灯台紀行 新潟・鶴岡編

<灯台紀行・旅日誌>2020新潟・鶴岡編#10
鼠ヶ関灯台撮影3

小高くなった、灯台周りの狭い敷地から、陸地側を見た。目の下には<恋のいす>があった。赤い鳥居も見える。漁港とか三角の岩山とか、なかば逆光だが、いいロケーションだ。と思ったのだろう、パチリと一枚撮った。お遊びで、ブログに載せようとも思った。灯台の敷地から降りた。案内板のあたりで、コンクリ通路が二股になる。右側が、先ほど、海から登ってきた道。左側は、どこへ行くのだろう?三角岩山(=弁天島)の縁沿いに続いている。まあ、行ってみるか。灯台に背を向けて歩き出した。少し行って振り返り、写真を撮った。太陽が、真上近くにあり、斜め逆光、きれいには撮れない。この位置取りも、午前中に撮っておくべきだったな。

コンクリ通路は、緩やかな下りだった。と、向こうから、年配の夫婦がやってきた。いわゆる、後期高齢者だろう。その旦那と奥さんの距離の置き方が、ややおかしい。つまり、旦那の方は、通路の下の岩場を歩いて灯台へ向かっている。一方、奥さんは、歩きやすいコンクリ通路にいる。サングラスにサンバイザーを被っていたからなのか、二人の顔はよく見えなかった。いや、よく見なかった。

ただすれ違いざまに、左下にいる旦那の表情をちらっと見た。なんだか、苦虫を噛みつぶしたような顔をしている。ものすごく暑い、ということもある。それにしても、互いに老い先短い夫婦が観光に来ているわけで、もう少し表情を崩してもいいだろう。余計なお世話だが。

三角岩山の影に入った。日陰だ。振り返って、灯台の方を見た。もう、かなり遠くて、写真にはならない。同時に、例の老夫婦の姿も目に入った。旦那は、岩場から、背丈以上高い、コンクリの通路へよじ登ろうとしている。奥さんの方は、コンクリ通路の上から、何か言っている。ようするに、旦那は、意固地になって道なき道を進んで、危険を冒している。奥さんが諌めているわけだ。

と、ふと思った。そうか、コンクリ通路ができる前は、波打ち際の岩場を伝わって灯台を見に行っていたんだ。旦那がよじ登ろうとしている場所には、おそらく、ロープか鎖が架かっていたのだろう。いわば、灯台への、昔の通路で、ひょっとしたら、旦那は、以前、今の奥さんではない、別の女性と一緒に歩いたのかもしれない。その記憶が、あの意固地さの由来だったのだ。おそらく間違いない!

日陰ということもあり、小休止方々、なおも、老夫婦の行方を眺めていた。旦那は、老体に鞭打って、あぶなかっしい感じで、何とか、通路に這い上がった。奥さんの諦め顔が目に浮かぶ。そのあと二人は、やはり少し距離を置いて、灯台の敷地に上がっていった。ふむ、<恋のいす>には腰掛けなかった。日向だからな。

そのあと、二人して、金毘羅様などをちらっと見て、灯台の根本へ行った。さっき自分が休憩していた、日陰だ。奥に旦那のシルエット、手前に奥さんのシルエットが見える。と、旦那のシルエットが半分になった。おそらく<愛のいす>に腰かけたのではないか。そして振り向いて、こっちに来い、と奥さんに呼びかけたのかもしれない。だが、奥さんのシルエットはそのままで、少したって、灯台の縁に腰かけた。シルエットは離れたままで、肩寄せ合って並ぶことはなかった。ま、あの旦那、奥さんに声はかけなかったかもしれない。

もういいだろう。灯台に背を向けた。三角岩山の裏側、というか表側に来た。見上げてみたものの、登れるような道も階段もなかった。それよりも、左手の漁港の向こうに、小さく、白い防波堤灯台が見える。いま思えば、灯台の根本から撮った、赤い防波堤灯台のペア灯台ということになる。近づくには、コンクリ通路からそれて、目の前の防波堤に登り、その上を百メートル以上歩いていかねばならない。

大した高さでもない、いちおう、防波堤に登った。辺りを見回した。炎天下の漁港に人影はない。ところが、防波堤は意外に高くて、幅も狭い。ちょっと危険を感じた。そのうえ、暑くてかなわん!ま、いいか、ということになり、コンクリ通路に戻った。灯台は、完全に三角岩山に隠れて見えなくなった。

少し行くと、朝来た時にUターンした場所に出た。立派な神社が目の前にある。日章旗が掲げてあったかな?目障りな感じがしないでもなかった。とはいえ、観光気分で、鳥居をくぐった。本殿の前に行って、財布から小銭を取りだし、賽銭箱に投げ込んだ。一応、手を合わせ、垂れ下がった太い紐を引っ張って、鈴を鳴らした。さえない音色だった。それと、賽銭箱の前に<おみくじ>があった。一瞬、引いてみようかと思った。だが自制した。意味がないだろう。

そうそう、書き記すのを忘れていたことを思い出した。灯台を去るときに、例の<しあわせの鐘>を、面白半分に鳴らしたのだ。意外に大きな音で、海に響き渡った。と、むかいの防波堤の影から、真っ白なプレジャーボートが、ものすごい勢いで、こっちに突進してくる。一瞬、あれ~まさかと思った。いたずらが発覚したような気持になった。そんなはずはない。なにしろ、ちょっと前、若いカップルが鳴らしていたのを、この耳で聞いているのだ。むろん、勘違いだった。白い波を立て、プレジャーボートは目の前を横切って行った。

どうでもいいことだが、鈴とか鐘とかがあると、意味もなく、鳴らしてみたい衝動に駆られるようなのだ。なぜだかわからない。これまで幾多の神社仏閣で、賽銭箱に小銭を入れたのは、鈴や鐘を鳴らしたいがための手続きだったような気がする。タダで鳴らすには気が引けたのだ。

なお、この<厳島神社>には、面白いものがあった。巨大な錨で、それも三基、形よく並べてあった。何しろ、くっついている鎖の(錨鎖=びょうさ、と言うらしい)一個が、手のひらサイズの大きさだ。なぜ、ここに置いてあるのか、案内板はなかったような気がする。まじめに?何枚かスナップした。ちなみに、この巨大錨は、先ほど書いた、トイレ正面の、背丈ほどの錨の数倍はあった。

これで、午前の撮影は終わり。十二時頃になっていた。鳥居を背にして、ぐるっと辺りを見回した。左手は、漁港。先ほど、その上から見た、防波堤下の道は、関係者以外立ち入り禁止だった。依然として、人影はない。なるほど、漁港全体が工事中なのだ。小さな立て看板を見たような気もする。と、真新しい灰色の防波堤の向こうに、白い防波堤灯台が見えた。道から、立ち入り禁止の漁港に少し入り込む。カメラを構えた。電線が邪魔だ。それに、工事中だけあって、付近が雑然としている。気のないシャッターを押した。

向き直って、駐車場へ向かった。その時、一台の軽自動車がやってきた。なかから、険悪な表情をした爺が出てきた。なぜか、こちらを睨んでいる。ちょっと体が不自由なようだ。その表情は、言ってみれば、激高した人間のそれで、怒りと嫌悪に満ち満ちている。何か、悪いことでもしたのかな、と自分を顧みた。あるとすれば、コロナ禍の中、旅行していることだ。もっとも、それとて<自粛要請>が出ているわけでもない。

ま、シカとして、自販機でスポーツ飲料を買った。と、爺が、道の向こうから、わざわざ自販機のそばまで、不自由な体を引きずってきた。相変わらず、激高した表情で、こちらを睨みつけている。あの体で運転して来たのか?いや、軽自動車から、息子のような、介護者のような、貧相な中年男が、爺のもとへ駆け寄ってきた。今や、二人は自販機の前にいる。

自分は五、六歩離れて、ふり返る。依然として爺が、こちらを睨みつけている。貧相な男が爺の腕を抱えて、無言で、なだめているようにみえた。なんだかよくわからない。自分の風体が気に障ったのだろうか?でかいカメラをぶら下げているのだから、写真を撮りに来た観光客であることは、誰が見ても一目瞭然だ。だが、じいっと何回も睨まれた。意味が分からない。釈然としなかった。

歩き始めると、右側の土産物店から、香ばしい匂いがしてきた。いや、もっと前から匂いには気づいていた。暗い店の中から、シルエットのおばさんが、<いらっしゃいませ>と声をかけてきた。軽く会釈して通り過ぎた。見ると、日向になっている道の方には、ずらっと台が置かれていて、その上に、イカとか魚とかが干してある。みな<ひらき>になった状態で、アウトドアで使う青い乾燥用ネットや、金網の中できれいに並んでいる。エイリアンみたいな形のものもあった。

土産物屋は二軒しかなかった。公衆便所に近い方の店では、二人のおばさんが、何か話しながら仕事をしていた。そばを通り過ぎても、何の反応もない。そのあと、便所で用を足した時、その店の、横壁の剥げかけた看板を見た。<・・・生産組合弁天販売所>とあった。二軒の土産物屋の、おばさんの愛想の違いが、理解できたような気がした。いま調べると、正確には<鼠ヶ関水産加工生産組合弁天販売店>だった。愛想のいい方は<弁天茶屋>。おそらく昔からの土産物屋なのだろう。前者は、漁師のおかみさんたちで、後者は茶屋の女将だったのだ。

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