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此岸からの風景

<日本灯台紀行 旅日誌>オヤジの灯台巡り一人旅 長~い呟きです

2021

07/28

Wed.

11:27:08

<灯台紀行・旅日誌>2020 

Category【灯台紀行 福島・茨城編

<灯台紀行・旅日誌>2020福島・茨城編#3
鵜ノ尾埼灯台撮影2

短いトンネルをくぐって、すぐに右折。相馬港に入った。右側に高い堤防があり、その下に車を縦に止められる駐車スペースがあった。ちょうどいい。というのも、その堤防越しに、岬が見え、その上に灯台が立っているのだ。海の中には、たしかサーファーが二、三人いたような気もする。外に出た。カメラ二台を手にして、岬の灯台を狙った。だが、ちょうど逆光だ。青空が白茶けている。今は無理だなとすぐに諦めた。

車を出した。今度は、だだっ広い漁港の中を、岬の上から見えた灯台はどこかな、ときょろきょろしながら、ゆっくり走った。目の前には、係船岸壁が何本もあり、釣り人で盛況だ。ただその先は、いずれも高い防波堤になっているような感じ。灯台は見えない。それに、体調不良で、もう写真なんか撮る気がしない。昼寝だな。

日差しが強いので、日陰はないかと見まわした。だが、そのような場所は、どこにもない。左手に、そう、あの<松川浦大橋>があるではないか。半信半疑で近づくと、背の高い橋脚の下に駐車できるようになっている。ただし、橋があまりに高いので、日陰にはならずカンカン照り。橋の影は道路にかかっている。ま、いい。一応車を止めて外に出た。駐車場から、コンクリ階段を数段登ると、だだっ広い公園だ。ベンチはあるものの、日陰はない。

見ると、橋の下には、運河のような流れがある。いま、地図で確認すると、この場所は、<松川浦>という砂州で区切られた湖?と海がつながっている唯一の場所なのだ。だから、<松川湖>ではなく<松川浦>だったのだ。この時は、そんなことは思いもよらず、柵沿いに数珠なりの釣り人たちを見て、よく釣れるのかな、くらいにしか思わなかった。

公園の端には、真新しい簡易トイレが数基並んでいた。用を足したいような気もしたが、婆さんや爺さんが、出入りしているのが目に入ったので、行く気がなくなった。どうしてかって、野外に設置された簡易トイレほど、気持ちの悪い物はないではないか!むっと暑くて、汚くて、臭っている。しかも密閉空間だ。車に戻った。もう限界だった。日陰を探すのも面倒で、すぐにも、後ろの仮眠スペースにもぐり込みたかった。

正面からの陽射しがきつい。フロントガラスにシールドをかけようとしたら、自分がさっき上がって行ったコンクリ階段に、スケボーを手にした、三十代くらいの、人相の悪い男が見えた。ちらっと、こっちを振り返ったので、目が合ったような気もする。なんなんだよ、あの野郎は!気分がよくないので、すぐに移動。といっても行く当てもなく、漁港のだだっ広い駐車場の、周りにほとんど車の止まっていない場所を選んで車を止めた。むろん、カンカン照りの中だ。

だが、この否応のない選択は、間違いでもなかった。というのも、季節はもう、完全に秋だった。カンカン照りといっても、夏場とは違い、エアコンなしでは車内にいられない、というほどの暑さではないのだ。左右四枚の窓ガラスを少し開けた。涼しい風が入ってくる。持ち物、荷物でごった返している、うしろの仮眠スペースに滑り込んだ。

荷物どもを脇へ寄せ、自分のスペースを確保して、横になった。横になった瞬間、おしっこがしたいような気になり、再び起き上がり、例の<おしっこ缶>を取り出して、用を足した。その際、ちらっと、外が見えた。というのも、面倒なので、すべての窓にシールドを張ったわけではないのだ。と、さっきのスケボー男が、すぐそこにいる。俺の後をつけてきたのか!と一瞬勘ぐった。そうでもない感じなので、両ひざをついたまま、前をはだけた状態で、奴を観察した。

十メートルほど先にいたが、それ以上は近づいてくる気配はなく、下手なスケボーを転がしている。どう見ても、辺りの雰囲気からは浮いている。だって、ここは漁港で、ほとんどの人は釣りに来ているんだ。しかも、スケボーなんて、十代の坊やがやるものだろう。野郎は、まさか自分が、車の中から観察されているとは、夢にも思っていない感じだ。人に見られているかもしれない、という警戒心がない。無防備だ。人相の悪い、薄青っぽい服装の男は、そのうち、向こうへ行ってしまった。

体調的には、もう限界だった。ゴロンと横になって、目をつぶった。いわゆる、<側臥位=そくがい>だ。耳栓をしようかな、と思ったものの、面倒なのと、辺りが静かなのとで、そのままじっとしていた。そのうち、うとうとしたようだ。途中で、窓からの風が冷たく感じた。

起き上がって、コンソールボックスの横の<同行二人>棒を手に取り、その先っちょをブレーキペダルに押し当てた。そして、ハンドル左横のスタートスイッチを、身を乗り出し、人差し指で押した。<ブレーキペダルを踏んでスタートボタンを押す>。最近の自動車には、<キー>はないのだ。これでエンジンがかかった。さらに、運転席側のドアの側面にある、パワーウィンドウのスイッチを押して、少し開いていた、後部ウィンドーをきっちり閉めた。安心して、またうとうとした。

メモによると<昼寝―限界 便意、ほおがほてる、ねむけ、11:30~12:30 いくらもねむれない>とある。熟睡はできなかったとはいえ、小一時間、うとうとしたわけだ。少し元気が回復したのだろう、先ほどの、入り口付近の堤防の前に行き、車を止めた。外に出て、リアーウィンドーを開け、カメラ二台を取り出した。よいしょ、と堤防によじ登り、<鵜ノ尾埼灯台>を撮り始めた。太陽は少し西に傾き、逆光は、さっきよりはきつくなかった。

陽が差し込んでいるので、波しぶきが目に眩しい。サーファーの数も増えていたような気がする。写真の中に、何が面白いのか?波に翻弄される黒い人影が点在してしまう。この時は、さほど気にもならなかった。だが、あとで補正する段になって、サーファーさんたちには恐縮だが、写真的には、消し去る方がいいような気がした。

標準と望遠で、もうこれ以上、この位置からでは無理だろう、と思えるまで、しつこく撮った。要するに、撮れた気がしなかったのだ。とはいえ、撮り飽きて、今一度、岬の下あたりをじっくり眺めた。テトラポットに守られている感じで、狭い浜があるようだ。歩いて、岬の真下まで行けるかもしれない。灯台の、まだ見たことのない姿が期待できるわけだ。

堤防には、ご丁寧なことに、何か所か、砂浜に下りられる階段がついていた。むろん、サーファーたちはここを下って、海に入るわけだ。この狭い砂浜は、おそらく、相馬港で唯一の砂浜だろう。砂の上を歩いて、岬方向へ向かった。ふと右手を見上げると、岬のどてっぱらを貫いている短いトンネルの入り口が見えた。その手前には、そそり立つ防潮堤が見える。

問題はその下だ。というか、波際のテトラポットと防潮堤の間にある白っぽい石がごろごろしている場所だ。そこを通過しなければ、岬の真下には出られない。いやな予感がしたんだけれども、行けるところまで行くことにした。というのも、カメラを、一台は首に、一台は肩に掛けているので、万が一にもズッコケたら、カメラがだめになる。いきおい、慎重に歩かざるを得ない。ところがだ、これが、かなりの苦難の道で、足を出すところを目で確認してから、一歩進むという、いわば、<沢登り>に近い感じになってしまった。

波際には古いテトラポットがあり、それらは、あの<大津波>に襲われて、ひっくり返ったり、破損したりしている。なので、新しいテトラが、投入された。だが、新しいテトラが、びっしり、防潮堤まで積まれているわけではない。その間に、大小の石が敷かれている、というか、撒かれているのだ。大きいのは、一抱えもあり、小さいのでさえ、こぶし大だ。非常に歩きづらい。

それに、防潮堤は、岬の先端に向かっているのではなく、どてっぱらを貫通しているトンネルの前あたりで、中途半端なまま切れている。となれば、その後は、むき出しの断崖絶壁がそそりたっているわけで、その下のわずかな空間、ま、言ってみれば、多少の砂地なのだが、そこに大小の石がばら撒かれているだけだ。

岬の先端に近づけば近づくほど、足場は悪くなり、しかも、灯台は見えにくくなる。当たり前だ。思いっきり見上げたところに灯台があるわけで、すでに半分くらいは樹木に隠れて見えない。そんなことはあり得ないのだが、一瞬、今地震が来たら、一巻の終わりだと思った。なぜって、断崖が崩れ落ちてきたら、逃げようがないだろう。足場は悪く、走れない。そのうち、あせって転んで、カメラをだめにする。しかも、足に怪我をして、なかなかこの海辺から避難できない。サーファーたちは、とっくに避難して、周りには誰もいない。声を限りに助けを呼んでも、無駄だ。そのうち、大津波が来て、一気に飲みこまれてしまうのだ。

やめよう!妄想だ。だが、これほど極端ではないが、嫌な予感が当たってしまった。ほぼ岬の先端にまで到達して、樹木にほとんど隠れた灯台を、これでもかと撮って、引き上げた。テトラや大小の石の間を、例の<沢登り>の要領で、渡り歩いていた時、足の裏が変な感覚になった。踏ん張りがきかないのだ。あれ~、と思って、下を見ると、黒いコールタールのようなものが目に入った。なんだろう、と摘み上げてみると、足形だった。なんで?一瞬、間をおいて、気づいた。左足の靴の底がつるつるしていたのだ。

おわかりだろうか、過酷な<沢登り>歩行により、靴底が剥がれてしまったのだ。<ダナー>というブランドで、本革の、底が凸凹しているウォーキングシューズだった。ただ、購入したのが、十年以上も前だった。ま、それにしても、靴本体と底が、接着されているとは思いもしなかった。経年劣化で、その接着剤がきかなくなり、剥がれたのだ。まさに、青天の霹靂だった。仕方ない、帰宅したら、接着剤で張り合わせてみようかと、その黒いコールタールのような足形を、指先でつまんだまま、引き返した。何しろ、ポケットにしまうにはデカすぎたのだ。

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